銀色の玉の中で息を潜めて丸まっている

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雨が降るとどうしても憂鬱になる。

オレの小さい折り畳み傘では雨を防ぎきれない。

雨は深く染み込んでじっとりと濡らす。ズボンが太ももに不快に貼りついて舌打ちする。

 

オレの折り畳み傘はもう古いし、生地は薄いし、オレはうまく畳めないから皺がたくさんあって、水滴を弾かない。それでも健気にオレを雨から守ろうとする。実際には守れていないが。それでも。

この傘は上の部分が回転する。向こうから歩いてくる人の傘とぶつかると回転して、受け流して、持ち手に衝撃を与えない。賢い傘だ。

 

そんな芸当はできない。オレは不器用にぶつかってその衝撃を一身に受ける。雨がじっとりと濡らして決して乾くことはない。いつか乾くよと言われ続けたが一度染み込んだ雨はなかなか乾かないし、折り畳み傘の皺は二度と取れない。

 

天気予報みたいに全部の未来が分かれば良いのに。不公平なことに過去は見えても未来は見えない。オレたちは未来が見えないから過去を見るしかない。何度も何度も。嫌という程。

 

雨で視界がぼやけてきても目を凝らして過去を見る。そのうち何も見えなくなっても虚しくそこを見つめ続ける。まるでそこに太陽の鍵があるみたいに。実際には雨はずっと降っていたのに。太陽はとっくに姿を隠していて、雲は割れることはなかった。それでも以前に太陽が出ていたような朧げな記憶だけを見つめている。

いや、実際に太陽が出ていたのかもしれないが、そんなことももう忘れてしまった。忘れてしまうほど雨は降り続いている。ただ、太陽の強い光は目を閉じると蘇ってきて脳髄に突き刺さる。