銀色の玉の中で息を潜めて丸まっている

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恋愛の話

「A>B かつ B>A」を満たせ、と言われたことがあるだろうか。

 

これは基本的には不可能だとされている。オレは数学ⅡBまでしか勉強していないけど、これを満たすことは(恐らく)できない。数学ガチ勢は黙っていてほしい。

 

しかし、これを満たせと要求してくるものがある。

しかも皆無自覚にそれを受け入れている、ありふれた存在だ。

 

恋愛である。

 

恋愛は我々に「A>B と B>A を両立させろ」と要求している。これは致命的な構造上の欠陥ではないか。オレはこれに気付いたとき全く愕然とした。人類が誕生して以来、ずっと我々に優しく寄り添ってきた恋愛はかくも理不尽な要求をしていたのだ。

 

どういうことか。

 

前提としてここでの恋愛は、「誰かをめちゃくちゃ好きになってしまうこと」であり、「そのめちゃくちゃ好きな人に好きになってもらうこと」を目的にした情動としたい。

目的が欠けた無償の愛もあるかもしれないがそれは恋愛じゃない気がする。

あと、「別にめちゃくちゃ好きってわけじゃないけどとりあえず付き合う」みたいな輩は半日滝に打たれてほしい。滝に打たれたのち市中引き回しの刑。

ブログなので全部個人の意見です。

 

いいですか。いきますよ。

 

まず、AさんがBさんを好きになった場合、AさんにとってBさんの魅力度は跳ね上がっている。少なくとも実感としては世界一の魅力度を持つ者になるわけだ。実感としては、というのは客観的にどうかは関係なく主観的な判断であるという意味だ。(ちなみに客観的に魅力度が一番高いのは中条あやみというのが通説である)

このとき、当然Bさんの魅力度はAさん自身より高い。そりゃそうだ。これは考えてみてほしいんだけど、自分より魅力度が低い(と思われる)人を好きになることってあり得なくないですか。あるのかなあ。無いと思います。

 

すなわち、魅力度について、「B>A」である。

 

さてAさんの念願叶って、BさんもAさんを好きになったとしよう。この状態は基本的には「付き合っている」とされる。例外は多いが、今は理想個体について議論しよう。

 

このとき、BさんにとってのAさんの魅力度は「一位」である。つまり、Bさんの主観的には、魅力度は「A>B」ということだ。

 

ここまではいいだろう。互いに、相手の方が自分より魅力的であると感じている状態が生じた。

 

この時点で矛盾しているように見えるかもしれないが、それは早計だ。なぜなら、魅力度はあくまで主観的なもので、客観的な指標は存在しないからだ。AさんとBさんの物差しが互いに違うということだ。だから関係性としては成立する。

それはそうだ。

 

しかし問題は、恋愛の当事者になったときに我々は結局AさんかBさんいずれかの立場に立たなければならないということだ。

 

Aさんは、「Bさんにとっては自分の魅力度がBさん自身より上である」ということをどのように認識すればよいだろうか。

 

これは不可能であると私は主張する。

 

なぜなら、Aさんは「A>B」という式を理解しようとしたとき、自分の指標を用いるしかないからだ。この指標は客観的なものではないために、思考の前提として主観に完全に依存しているのである。

もう少し説明するなら、魅力度の判断は理性ではなく感覚に近いということだ。

 

熱いものに触れて「熱い」と感じた時に「いや、熱いと思うのは良くない」と思うことはできても、「いや、『熱い』とは感じていない」と心から思うことはできない。感覚は絶対的で否定できない。

魅力度の判断はこの意味で感覚に近い。(「あの人を魅力的と思うなんておかしい」と自問することはできても、「魅力的だと思っていない」と否定することはできない)

直接的に五感によるものではない。がしかし、理性というより感覚に近いだろう。

 

そのため、理性によって「物差しが違うから」といくら言い聞かせても、自分の中にある「相手>自分」の圧倒的な魅力度の大小関係を崩すことができない。つまり、Aさんは「Bさんが『A>B』だと思っている」ということを心から信じることが構造的に不可能であるということだ。

 

もし、これを心から信じた時、今度はAさんは自分の「好き」の基盤であった「B>A」を信じられなくなる。一気に二つの物差しを心から信じることはできないからだ。(「熱い」と「熱くない」を同時に感じることはできないだろう)

 

要するにこういうことだ。

 

自分が相手のことをめちゃくちゃ好きである以上、相手も自分のことがめちゃくちゃ好きだと信じることができない。それを信じた場合、今度は自分が相手のことを好きだと心から信じられない。

 

現実では知らない。理論上はそうなる。

 

「拗らせてんな」

その通りです。