銀色の玉の中で息を潜めて丸まっている

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怖い話

幼稚園の頃、北海道に住んでいた。

 

札幌雪まつりに行ったとき、そこにあるお化け屋敷に兄と二人で入った。兄は小学校2年生だった。オレは幼稚園の年長。

 

そのお化け屋敷は、人が演じるお化けではなく、機械仕掛けの人形がメインだった。

 

兄の後ろに隠れながら途中まで進んでいくと、坊主が壁に何度も頭を打ち付けていた。

 

ろうそくの明かりに照らされた坊主は何度も何度も頭を壁に打ちつけていた。坊主が動くたびに、キシャー、と機械音がする。キシャー、ガン!キシャー、ガン!

 

その坊主の仕掛けは、オレたちが近づいたから作動したわけではなかった。この機械音は入り口からずっと聞こえていた。何かのきっかけで動き始めたのではなく、坊主はずっと、誰も見ていないときでも、ただ頭を壁に打ち付けていたのだ。

 

猛烈に怖かった。異常な演出だった。その後のことは覚えていない。

 

それがあってからオレはお化け屋敷が軽くトラウマになっていた。二回目にお化け屋敷に入ったのは高校三年生の冬だった。富士急ハイランドの戦慄迷宮。日本で一番怖いと言われているお化け屋敷だった。

 

どうせやるならとことんやる、という生き方をしているので、お化け屋敷もどうせ行くなら一番怖いとこに行こうと思った。

 

心の準備をしていった。札幌雪まつりのお化け屋敷とは比べ物にならないくらい怖いに違いないからだ。

 

これがそれほど怖くなかった。友達と一緒に入ったのも大きかっただろうが。突然横からお化けが飛び出してきたり、いきなり人形が動き出したりするのは怖かったが、オレにとっては坊主が壁に頭を打ち付けている方が何倍も怖かった。入ってからずっと聞こえていたキシャー、キシャー、という音の正体が坊主が頭を壁に打ち付けている音だとわかったときの恐怖には到底及ばなかった。

 

オチがないので、オレが知っている一番怖い話をする。

 

 

廃屋を巡るのが趣味だ。そこで止まっている時を感じるのが好きだ。

昨日もある廃屋に行った。そこはまだ生活感が残っており、取るものもとりあえず、夜逃げでもしたのか、というくらいだった。

 

キッチンに入った。皿やコップ、包丁、箸などがそのまま残されている。

 

ただ、何か違和感があった。

 

よく見るとその原因がわかった。箸だ。

 

家族四人で暮らしていたのだろうか、黒くて立派な箸、赤い塗り箸、子供用の箸が青とピンクの二種類。

 

 

その箸が全て三本ずつ、箸立てにささっていた。

 

 

これが一番怖い。そうでもない?