銀色の玉の中で息を潜めて丸まっている

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状態動詞の話

know, remember, believe, realize, like, love, hate, want, understand.

 

これらの単語群の共通点がわかりますか。みなさんならすぐわかると思います。そうです、進行形にできない。

用語では「状態動詞」というらしいが、そんなことはどうだって良い。

 

これを高校の英文法の授業で聞いたときやけに納得した覚えがある。結局、knowとかrememberとかloveとか、そういうのって自分の意志でどうこうできるものじゃない。歩くのを意図的に止めることは容易だが、好きでいることを意図的に止めることはできない。一度知ったら、知る前の状態には自分の意志では戻れない。

 

オレの心はオレの脳が作りだした幻想だが、オレの手から離れて好き勝手やっている。「忘れろ」「好きになれ」「ほしがるな」こんな命令に従えたらどんなに楽だろうか。

 

理不尽なことに、オレたちを苦しめるのは大抵、自分の意志ではどうにもできない、こうした状態動詞群だ。時間という大怪獣が、全てを破壊していくのを待つことしかできない。他になすべきことはない。銀色の玉の中で死んだように息を潜めて丸まっている。

 

ただ、こういう「自分の意志ではどうにでもならない自分の中にあるもの」が唯一この世界の証明になる。自分の意志で操作できるものはあまりに恣意的で本質とは思えない。信用できない。まして、自分から離れて存在しているものなど、どうやって信用しろというのだ。そこにある石が、オレの目に映る通りの石であると何が証明してくれる?

 

自分の中にあって、かつ、自分の意志で操作できないものしか、世界を確信させないだろう。最後まで疑いきってしまえばそういうことだ。

 

この、世界を確信させるものがオレたちを苦しめるのだが。世界の本質は常に理不尽で、突然だ。

 

THE BLUE HEARTSの『少年の詩』で甲本ヒロトは「どうにもならないことなんて どうにでもなっていいこと」と歌っているが、そうやって切り捨てられたらどんなに楽なことだろうか。

 

強く生きるとは、賢く生きるとは、上手く切り捨てることだ。

世界を常に切り捨てていくことだ。

 

 

ちなみに、状態動詞でもマクドナルドの”I’m lovin’ it”みたいに口語表現では進行形にできるそうです。なんだそれ。